花見杯第二回戦 自戦記
6月に入って早二週間と少し。朝から窓を叩く雨音で目が覚めました。
……というか、少ししか窓開けてないのに寒いのなんのって。冬か。いやもう夏だ。
とまぁ、そんなわけで。梅雨時の午後のひと時を皆さまいかがお過ごしでしょうか。
いやぁ地震すごかったですねぇ。8時頃に「さてもうひと眠り」なんてしようとしたらいきなりグラグラ!と揺れるんですもの。おかげで完璧に目が覚めてしまいました。夜仕事なんだしもうちょっと寝ていたかった……
いやいや。それはともかくとして、花見ラインの面々に大事がなくて何よりです。まだ本震、あるいは余震が続く可能性もあるので引き続き警戒を怠らないよーに。
それじゃあ、今回もやっていきましょー。
・・・・・・
【第一期花見杯トーナメント 二回戦】
先手:meowkof(のだくん)
後手:Knocking_Door(わたし)
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩(第一図)
◯苦手な相手
実際のところ、野田君と指すことはあまり多くなかった(ような気がする)。指す戦法が苦手とかではなく、単純に人となりが苦手だったのかもしれない。なんというか、こう、違う世界の人、のような気がしたのだ(このあたり澤田のおねえさんだったりすわ先輩にも同様のものを感じていた)。
……とはいえ、当たってしまったものは仕方がない。あまり多く指すことはなかったとはいえ、大体どんなものを指すかぐらいは知ってますとも。
ずばり、三間飛車。それもノーマルの。
いや懐かしいなぁ! 昔は部室で西川先生の居飛穴破りの本並べてたっけ。
あー、そうそう。思い出してきた。野田君とは対局じゃなくて棋譜、棋書並べを一緒にすることが多かったんですよ。三間周りは僕の知らない部分がケッコーあって勉強になったなぁ。トマホークとかコーヤンとか。……まぁ、今となってはすっぱり忘れちゃったんですけどネ! あはは。
さて本譜。僕は先手なら初手▲5六歩からの中飛車を予定していましたが、生憎後手番になったときのことは何も考えていませんでした。準備不足? いつものことですね。
三手目▲7五歩は早石田を目指した手。……おい待て、ノーマルの三間飛車はどうしたんだよ!? 聞いてねぇぞ!! こ、この詐欺師め!!
いやまぁ冗談は置いといて、早石田はかなり厄介な戦法です。一時期はゴキゲン中飛車と人気を二分した振り飛車──特に『攻める振り飛車』系の有力戦法。自分が指すとパッとしないクセに、相手に指されるとめちゃくちゃ厄介、というのが僕の認識です(それはお前が弱いだけだろって意見は聞こえませーん。あーキコエナーイキーコエナーイ)
四手目の一般的な応手は本譜も含めて五通り。
まず一つは△8四歩(下図)
シンプルに居飛車を目指した手です。以下は▲7八飛△8五歩▲4八玉△6二銀▲3八玉のような感じでしょうか。このあと先手は飛車を浮いて後手はそのタイミングで角を交換することになります。陣形は片美濃対矢倉になることが多いです。
二つ目は△4二玉。
上と同じ居飛車を目指した手ながら上とは決定的な違いがあります。
さて、それはなんでしょう?
△4二玉に同様に▲7八飛と振ると△8八角成があります。
以下▲8八同銀に△4五角が急所。6七と2七の角成が同時に受かりません。
なので△4二玉には▲6六歩と角道を止めてから▲7八飛と振ることになります。
以下の進行として先手は石田流本組みを目指し、後手は左美濃から銀冠を目指すのが定跡です。最近では先手が藤井システムのように3九の地点に玉を置いたまま後手玉頭を攻める手法があったり、後手は銀冠から銀冠穴熊に組み替えたりと、数年前とは違い戦い方に多様性が出来ています。
三つ目は本譜の△3五歩。
相振り飛車を目指す手。亜種に石原流があり、これは後述の△1四歩のような含みを持たせた指し方です。
相振り飛車の中でも一番両者が突っ張った指し方で、指し手次第では一気に終盤になる変化もあります。なので、これを指す場合はある程度の知識(この手は指してはいけないというもの)を持ってないとケッコー怖いです。
他の相振りとは違って漫然と組み上がってしまうと手詰まりになりやすく、そのため打開が難しい戦型でもあります。
四つ目は△5四歩。
基本的には相振り志向の手ではあるのですが、展開次第では通常の対抗形のような勝負にもなります。
なお、この手に対して▲7八飛と振るのもやはりアウトで角交換から△4五角があります。△5四歩が▲7六角と打ったときに4三の角成を防いでいるんです。
▲6六歩と角道を止めたときに後手は△4二銀かちょっと捻って△3二飛、あるいは△6二銀か。この辺りは指す人のセンスが問われます。
そして最後は△1四歩。
これまでの四つと比べるとやや狙いがぼんやりしてる感がありますが、それがこの手の狙いです。
対して▲1六歩とお付き合いすれば後手は速やかに端攻めの態勢を整えていきます。
これを嫌うならどこかへ飛車を振ることになるのですが、それには△1五歩と端を突き越して居飛車を目指します。
要は△1四歩という手は相手の様子を見て態度を決めようという手なんです。難しいですねホント。
これが絶対イイ! とまではいきませんが、選択肢としてはおもしろいと思うんですよね。
早石田が如何に厄介か、というのは四手目にこれだけ対応手段がある、というのを見てもらえればわかってもらえるかと。
結局どれを選ぶかはその人自身が決めることですし、あくまでこんなのがあるんだ程度に留めておくのが普通です。
第一図からの指し手
△3五歩 ▲7八飛 △3二飛 ▲2八銀
△5二金左 ▲5八金左 △6二玉 ▲4八玉
△3四飛(第二図)
◯どっちがいいの?
先手は▲2八銀と上がる。幾分早いような気もするが、△4五角の筋を消しておくには確実な手段と言える。欠点は壁銀となること。これは玉置ー諏訪戦の棋譜を確認してほしい。
対してこちらは△5二金左~△6二玉と囲いをまだ見せない。一応は美濃を目指しているが場合によってはここから金無双も十分あり得る。
結局のところ、相振りにおける金無双・美濃論争は指し慣れた方が良い、という結論に落ち着くと思うのですよ。どちらにも長所・短所があるわけで一概にどちらが優れている、とはならない……ような気がする。知らんけど。
△3四飛と浮く指し方はお気に入りの指し方。先手で相三間になったときもよくやってます。狙いは……?
第二図からの指し手
▲7六飛 △3三桂 ▲7七桂 △7二銀
▲9六歩 △7一玉 ▲9五歩 △4二銀
▲6八銀 △6四歩(第三図)
◯狙い通り
互いに飛車を浮いて桂馬を跳ねる。何気ない手順のようですがこちらは主張を通すことに成功。角交換が無くなったので悠々と△7二銀~△7一玉と美濃囲いに収まりました。やっぱり振り飛車といえば美濃囲いですからね!
……何気ない手順、とは言いましたが、ぶっちゃけ飛車浮きにはお付き合いしてくれることが多いんですよね。そうすれば桂跳ねまでがセットの手順になるから、安心して美濃囲いに組める。
だからまぁ。ちょっと突っ張って高美濃囲い目指しちゃったんですよね……
相三間が詰まりやすい、というのは上でちょっと語った通りで、だからそうならないように相手の飛車を圧迫するように上部に厚い囲いを目指したのですが……
第三図からの指し手
▲7四歩 △6三金 ▲7三歩成 △同銀
▲8五桂 △7四銀 ▲2六飛 △2四歩
▲8六歩 △8四歩 ▲9三桂成 △同香
▲9四歩 △同香 ▲同香 △9三歩
▲同香成 △同桂 ▲9四歩 △2五歩
▲1六飛 △2四桂 ▲4六飛(第四図)
◯大きな見落とし
▲7四歩は当然の手。黙って△6三金を許しては癪でしょう。対して△6三金と上がったのが数手後の手を見落とした痛恨の一手。ここでは△7四同歩として▲同飛にそこで△6三金と上がるのが正しかったです。
本譜は▲8五桂が絶好でこちらが一辺におかしくなってしまいました。
その後の△8四歩で桂を取れると思ったら▲9三桂成がこれまた見落としていた手。
9筋を破られ玉形を大きく乱され、ハッキリ言って「これは負けたな」と、ほとんどこの辺りからは諦めムード全開で指していました。
とにもかくにも勝てる形ではない。勝負形に持っていこうにも向こうへの取っ掛かりが少なすぎるんです。
桂を打って飛車をいじめつつ玉頭を狙うも、やはり届く気はしないです。
第四図からの指し手
△3六歩 ▲9三歩成 △3七歩成 ▲同銀
△3五香 ▲3八歩 △3七香成 ▲同歩
△3六歩 ▲5五桂 △3七歩成 ▲同桂
△5二金 ▲6三桂成 △同銀 ▲8三と
△6一玉(第五図)
◯どこで投げるか
3筋からそれっぽく迫るものの、本来であれば壁銀となるはずだった銀まで捌かせてしまっては勝ち目がありません。
▲5五桂が厳しかったのですが、△5二金のところではまだしも△3六歩ですか。それでも大差には変わりありませんが、勝負?するならこれくらいはしないといけません。
6三の金を取られて▲8三と。よくもまぁ、ここまで広がってしまったものです。
△6一玉もほとんど無駄な手です。2~3筋まで逃げれば……逃げても無駄なのはわかってますが、寄せにくくはなるだろうという手。
正直投げ出したかった。
ただ。投げるにしても、どうせなら詰まされるまでやろうと思ってはいたのだけど……
第五図からの指し手
▲7三と △5四銀 ▲2三金 △3六桂
▲5一玉 △3一角 ▲3二歩 △5五銀
▲7六飛 △6五銀 ▲7二と △5一玉
▲7三飛成 △4一玉 ▲3一歩成 △同銀
▲5五角 まで(投了図)
◯完敗
▲2三金が左右挟撃のお手本のような手。△3一角と逃げた手には▲3二歩の追撃があまりにも厳しい。
最後は飛車を追っているうちに飛車に成り込まれて、さらに銀をタダで取られる始末。
あまりの大差っぷりに、まっきーさんもこれには苦笑い。
ホントどうしようもねー。
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序盤の駒組みの段階で応手を間違えてからは一方的な展開となってしまいました。
大した勝負所もなく終わって不甲斐ないです。
また一から研鑽の日々ですな。
それではっ