花見杯第一回戦 自戦記
早いもので5月が終わり、なんともう6月です。
一年の内半分が過ぎたというのに、この『モーラ全廃棄日記』の今年の記事数はなんとゼロ!
バ、バカ!! なんでもいいからなんか書いとけよ! ……と言われてもおかしくない(実際自分でもほんのちょびっと危惧していたんですが、如何せん3月までは精神的にやられてたしそれ以降は……おや?)状況だったので、今回の自戦記執筆はまさに渡りに船! といったところでした。いやネタになりそうなものなら幾つかあってんけどね…… 言うだけなら簡単というやつでした。
ほんじゃまぁ、そんなわけで。
まっきーの自戦解説はっじまるよー!
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【第一期花見杯トーナメント 一回戦 千日手指し直し局】
先手:arabian (ガッキー)
後手:Knocking_Door(わたし)
初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲5八飛(第一図)
◯予想外の戦法
ガッキーと言えば『右玉』、あるいは『入玉将棋』のイメージがある。こちらの攻めをいなし、王様が大空(もしくは大海原)へフライアウェイしていく様はなかなかに見応えがあって楽しい。
……いや、うん。見る分には楽しいんだけど、実際相手にするとかなりめんどくさいんですよね。なんせ入玉を目指されると普通の指し手と違って「こちらに入り込ませない」ようにしつつ「王様を取りに行く」必要があるわけで、そういった意味ではガッキーとの対局はやや苦手意識があり、けれどそういった部分が鍛えられる相手だったんだよなー、と昔は思っていました。
実はこの対局は上にもあるように千日手による指し直し局でして、その一局目が下図。
ここから▲6七銀△6二金▲5六銀△5二金▲6七銀と進行。
本来なら▲9九玉から穴熊を目指すべきなのですが「5五の歩がやや伸びすぎではないか」「そもそも仕掛けが難しい」という理由で千日手に逃げてしまいました。
実際ここから指すとすればひたすら『待ち』の将棋になると思うのですが、切れ負けという性質上(あとガッキーの棋風的に)ここで打開のために時間をかけてしまうのは=負けな気がしたのでした。
指し直し局はまさかの三手目▲5八飛! 見てくださいよ奥さん! 中飛車ですよ、あのガッキーが中飛車指してるんですよ!? めっずらし~い!
……こほん。気を取り直して。
のだくんのコメント「やや珍しい戦型ですよ」の言葉通り、ここから普段とは違った将棋が展開されていきます。
第一図からの指し手
△6二銀 ▲4八玉 △3四歩 ▲6六歩
△4二玉 ▲3八玉 △3二玉 ▲6八銀
△8五歩 ▲7七角 △5二金右 ▲6七銀
△3三角 ▲1六歩 △2二玉 ▲4八銀
△1四歩 ▲4六歩 △3二銀 ▲4七銀
△2四歩 ▲7八金 △5四歩(第二図)
◯狙いを悟る
こちらの△3四歩に対して▲6六歩と角道を止めてきたので、そこでようやく何をしてくるのかが判明しました。狙いは後の進行でもわかるように風車(で合ってる?)に構えることにあったのです。そのための三手目▲5八飛だったというワケですな。
しかしまぁ、これでマジの中飛車だったらホント困っていたんですよね…… なんせ旧式のノーマル中飛車なんて棋譜並べでしか見たことないし、じゃあだからって相手取って勝てるか?と言われたらそれはそれで別問題ですからね。ある意味では本譜で良かったという裏話。
△3三角~△2二玉は本来であれば穴熊を目指した動き。直前の▲1六歩を受けなかったのでこう指すところではあったのですが、後々になって端にロケットを作られやすそうで怖かったため左美濃に逃げました。強い人ならここで堂々と穴熊するんですよきっと!
△2四歩は銀冠への組み替えを狙う手。このまま△2三銀~△3二金とコンパクトにまとめる変化もありそうですね。その場合は5二の金を右辺に持って行ってバランスよく指すと思います。
第二図からの指し手
▲3六歩 △5三銀 ▲3七桂 △4四歩
▲2六歩 △2三銀 ▲5九飛 △3二金
▲6五歩 △1二玉 ▲4八金 △9四歩
▲6八角 △7四歩 ▲6六銀 △4三金右
▲7七桂 △7三桂 ▲8九飛 △9五歩(第三図)
◯指す手が難しい
▲3七桂には△4四銀も考えられるところ。以下△4二角~△3三銀引~△4四歩と進行できれば金銀4枚の堅陣が完成します。しかし△4四銀には▲4五歩としてどうでしょう。本譜のような展開になったとき無条件で角が玉頭を睨んでいるのは大きなメリットのように思います。
▲6五歩に△1二玉と寄ったのは警戒しすぎでした。単に△4三金右と上がってなんともない……はずです。穴熊放棄やこの玉寄りなんかは以前のぼくだったらおそらく指さない手で、ホント最近指してないなー、というのがまるわかりでお恥ずかしい限り。
▲6六銀はやや珍しい印象。代えて▲7七桂~▲5六歩でどうか。次に▲5五歩から一歩手持ちにしたり▲5七角から桂頭を狙ってみたりと手には困らなさそう。
とはいえ▲6六銀もこわい手ではあります。桂馬を跳ねるといつでも▲7五歩が権利になるので本譜の△7三桂はかなり勇気が要りました。この手で一分近く考えていたのは「桂跳ね以下▲5六歩~▲5七角のときにどう対処するか」というもの。それが最終手の△9五歩に繋がるワケですが、それでもやはり難しい(と対局中は感じていました)。
戻って▲7七桂と跳ねたタイミングでは△4五歩がありました。
▲4五同桂は△6六角と銀を取れば以下桂得。▲6七金と上がれば△4六歩から陣形を乱して△8六歩でこちらが良いです。なぁんだ、簡単じゃん!
第三図からの指し手
▲5六歩 △6四歩 ▲6七金 △6五歩
▲6五同桂 △同桂 ▲同銀 △7二飛
▲6四歩 △6二飛 ▲8六歩 △6四銀
▲7四銀 △6六歩 ▲5七金寄 △7七歩(第四図)
◯手の損得
△6四歩に▲6七金はなるほどといった手でした。7六の地点をカバーしつつ玉側に金を寄せていく手腕は流石の一言。
以下6五で駒を清算したときの次の手が問題でした。
△7二飛では△6二飛が本筋というか第一感で以下▲6四歩△同銀▲7四銀のときにどうすればいいのかわからなくて検討を打ち切ってしまいました。本譜の△7二飛なら次に△6四歩と打って銀を殺す手があると気づき「お、これでいいじゃん♪」などと楽観視してそう進めたのですが、そうは問屋が卸さない。
▲6四歩が当然の一手でこれには△6二飛なのですが、その局面は単に△6二飛と回ったときと比べて一手損しているのです。感覚が思いっきり狂ってるんですよねー、コレ……
このあたりはやや苦戦を意識していました。もう少し派手になればこちらの陣形の堅さが生かせそうなのですが、抑え込まれそうでどうにも苦しい。案外スキがないんですよあっちは。なんでどこかで技を掛けにいくしかない。
最終手△7七歩はその最たる例。次の△7八歩成を見せて向こうを焦らそうという意味ですね。
第四図からの指し手
▲7七同角 △6五桂 ▲同銀 △同銀
▲3五歩 △7八銀 ▲2九飛 △6七歩成
▲3四歩 △同金 ▲3五歩 △同金
▲3六歩 △3四金 ▲3五桂 △同金
▲同歩 △5七と ▲同金 △7六銀(第五図)
◯チャンスを掴む
▲7七同角には△6五桂。ただ、ここで▲6六角はありました。以下△5七桂成▲同角と進み次に▲8四角と出る手があって自信はないです。
なので▲6五同銀としてくれたときは正直有難かったです。次の△7八銀が厳しくてこれなら指せるかも?という感触を得られました。実際△6七歩成まで進めば数手前の苦しい局面が嘘のようです。
……とはいえ。手順に▲2九飛と回られているので善悪の判断は微妙なところ。玉頭はこちらが手厚いものの受け間違えれば即アウトです。
3筋でのやり取りはほぼ必然の応酬。▲3五桂のところは▲2七桂と控えて打つ手もありました。
桂を食いちぎって5七の金を取って△7六銀。飛車を走れる(まだ走れない)ようにしたのですが銀二枚がソッポに行ってしまうのであまり指したい手ではないですね。単に△6七金くらいでも良さそうです。
第五図からの指し手
▲4五桂 △3七歩 ▲同玉 △4五歩
▲3三角成 △同桂 ▲2五歩 △同桂
▲3六玉 △4八角(第六図)
◯勝ちを意識する
▲4五桂に△3七歩と打ってようやく寄せの形が見えてきました。▲4八玉なら△6八飛成が近くなるし、▲2八(七)玉と躱すのは逆にこちらから玉頭を攻めればいいです。
角を交換すれば手順に2一の桂が寄せに参加できます。次に△4六歩と取り込む手が厳しいです。
△4八角で先手玉は詰めろ、ほぼ受け無しです。この角を打ってようやく勝ちを意識できました。長い道のりでした。
第六図からの指し手
▲4四角 △3七角成 ▲4五玉 △3三桂
▲3三同角成 △同金 ▲3六桂 △5三桂
▲5四玉 △4三金打 まで
◯まずは一勝
△2二玉型だと▲4四角が王手飛車になっています。しかし△3三桂としておけば、やはりこれが詰めろで飛車を取ることはできません。
本譜▲3三同角成のところでは△5三桂から詰みがあるようで、実際それを読んではいたのですが、時間もあまりなかったので確実な勝ちを選びました。
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途中で△4五歩を逃してしまっていたため、かなり難解な中盤戦になってしまいました。△7七歩の騙しが入っていなければおそらく負けていたと思いますし、それ以降もかなり怪しくてホント紙一重の勝利です。
また次も頑張ります。
それではっ。